イギリスおたくの短い春と長い冬
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部屋の整理を始めたら、埋もれていた昔懐かしい本やら雑誌やらがわらわら出てきてつい読み耽ってしまった…ありがちなシチュエーションだな。
発掘した雑誌の中に15年近く前のAnimeUK(後にAnimeFXと改称)が数冊あった。これはイギリスで発行されていたアニメ雑誌で、当時の海外のアニメ専門誌の中では最も質が高かったと言ってよいだろう。執筆陣にはHelen MaCarthy、Frederik L. Schodt、James Swallow、Jonathan Clementsといった豪華な顔ぶれ。みなさん今ではすっかり有名人になってる。
当時のイギリスでは日本のアニメ・漫画がちょっとしたブームになっていた。今から思えば短い春の時代だった。この直後に起こったある事件のためにすべては暗転し、イギリスおたくの受難の日々が始まったのだ…
その後イギリスではLegend of the Overfiend(うろつき童子の初期三部作の英語版)をめぐる騒動が発生し、日本アニメ・漫画は現地のマスコミや政治家の袋叩きにあってテレビやビデオ・出版市場からほとんど姿を消してしまう。長い冬の始りである。
イギリスのオタクたちは半ば地下に潜伏し、もっぱら海外から作品を入手して楽しむしか方法がなくなった。古参のイギリスのファンの嘆きは今でも時々ブログやフォーラムで目にすることがある。「あの事件さえなければイギリスはもっとマシな状況だっただろうに」と。
最近ようやくイギリスのオタク市場も回復してきて、2008年には「時をかける少女」と「銀色の髪のアギト」のDVDが二ヵ月で1万枚を突破する売上を記録した。ジブリ作品とNARUTO・DEATH NOTEはそれ以上である。ただし漫画市場はフランスやアメリカと比較するとかなり遅れをとっている。フィギュアに関しては断片的な統計データしかなくどの程度売れているのか謎が多い。
現在イギリスはオタク文化排斥の長い冬がやっと終わって二度目の春を迎えている。ただしこの状況がいつまで続くのか不安も多い。特に問題なのは近年先鋭化しているチャイルドポルノ規制である。
今年1月にCoroners and Justice Billが英下院に上程され、現在議会で審議中である。Coroners and Justice Billは反テロリズム条項・データプライバシー排除条項を含む巨大な法案で反チャイルドポルノ条項はその一部。イギリスは過去20年に渡り段階的にチャイルドポルノ規制を強化してきたが、今回の条項はその総仕上げとも言える強力なものだ。
イギリスにはLegend of the Overfiend騒動の前科がある。行政とマスコミが一体となり、一部の過激な作品に過剰反応して日本のアニメ・漫画全体を葬り去った「実績」のある国なのだ。もしこの法案が英上院で無修正で可決されたら、日本製のアニメ・漫画・フィギュア・ゲームのかなりの部分が麻薬並みの違法物件となる。単純に所持しているだけでも懲役刑を科せられる厳罰である。インターネット上のロリCG等もダウンロードしただけで懲役刑の厳罰となる。
イギリスの動きは英語圏諸国やヨーロッパ諸国に影響を与えずにはおかない。良くも悪くも今なおイギリスは国際社会でかなりの影響力を持っているのだから。今後の展開が気がかりだ…。
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