minori、海外からの自社サイトへのアクセスを遮断 その１

まず最初に事実の確認から。

[1] No Name Losersの記事

2009年6月22日、minori製エロゲの英語翻訳プロジェクトを運営する海外サイトNo Name Losersにおいて下記の記事が掲載された。

2009.06.22 No Name Losers "Recent developments"

記事の該当部分の翻訳。

2009.06.22　最近の出来事

minoriは自社のウェブサイトへの日本国外からの閲覧を遮断した。（ただちにアクセスして試してみたまえ！） これは我々が当初から抱いていた疑念を裏付ける仕打ちである： minoriは我々外国人の事など眼中に無い。すべてのefシリーズ（の英語化パッチ）を独自に製作・発表するという我々の決断の正しさが立証されたと感じている。

（英語化）パッチはもっと倫理的であるべきだって？ ふざけるな！ minoriは外国人の金など必要ないし、欲しくもないらしい。minoriは日本販売分にのみサポートを限定するに違いない。minoriの目から見れば外国人ユーザーなど”汚い外人”にすぎないのだろう。以上、話は終わりだ。

ところで、Wind -a breath of heart-の第4章の翻訳作業は中断された。もしどなたか我々を手助けしてくれる方がおられたら、どうかe-mailを送ってほしい。当初の予想より遅れてはいるが、第3章と第5章の翻訳作業は続行している。

《訳者注：No Name Losersのグループはエロゲの無断翻訳に反対する海外ユーザーの集団から非難を受けており、「もっと倫理的であるべき」はその集団の抗議文の一節である》

[2] ドイツ語ブログOtaku Daysの記事

二日後、De JaY氏は上記のNo Name Losersの記事を読み、ドイツからminori公式サイトへのアクセスを試みる。その結果は6月24日午前1時44分に氏のドイツ語のブログ”Otaku Days”に掲載された。

200906.24 am01:44 Otaku Days "ef collection show off"

ドイツからはminori公式ウェブサイトの通常のページ内容は表示されず、下記のスクリーンショットの内容が表示された。



[3] minori公式ウェブサイトの告知文

minoriによる海外ユーザーへの最初の告知文は以下の通り。

minori official website.

This website cannot be browsed excluding Japan.
Some foreigners seem to be having an antipathy against EROGE.
Therefore, We prohibited the access from foreign countries, to defend our culture.
Sorry for you of the fan that lives in a foreign country.
minori Inc.

以下この告知の翻訳（minoriの英文は語法がおかしいので正確に翻訳すると奇妙な日本語になる。そのため訳者の判断で修正して翻訳している）

minori公式ウェブサイト

このウェブサイトは日本国外からの閲覧が不能となっております。
一部の外国人の方々はエロゲに対して反感を抱いておられるように見うけられます。
そのため、我々の文化を守るために当社は日本国外からのアクセスを遮断させていただきました。
外国に居住しておられる当社のファンの方々には大変申し訳ありません。
minori株式会社

minori公式サイトは6月25日（あるいは26日午前2時頃まで）に更新され、下記の告知がなされた。

Why minori blocking foreign accesses?

We are little perplexing now because we received a lot of response about this issue from foreign people.
Now we will tell you the short detail about the reason why blocking you to this website, because of we, all Japanese EROGE makers were facing at the problem, the crisis of "Freedom of speech".
Currently, The bill that allows to limiting the content (It is censorship. Isn't it?) to all EROGEs is being discussed in the Diet because intellectuals and politicians said "Japanese EROGE were being problem and troubled with the foreign country.
Therefore we should make EROGE hidden away from foreign country, and also its content should be limited and censored".
Okay, now we trusted the word what they said at once. So we blocked you to make stay away from the trouble.
...Do you like that?
If not, please tell your idea directly to Japanese government and politicians.
For example, you can write the letter to the administration of Japan directly from here.
Otherwise, you just can talk your idea about this issue at your blog or other media to inform the existance of this problem to the public. It would be very helpful for us.
If you do so, we might be able to recover the "Freedom of speech" and the barricade lying inbetween us would be taken away.
Please help us.
We hope this separation would be only for short moment.
Sincerely.

以下minoriの告知の翻訳（例によって英文の語法があちこち変なので訳者の判断で適宜推測して翻訳している）

なぜminoriは外国からのアクセスを遮断したのか？

本件に関して外国の方々からの大きな反応を知って、当社と致しましては少々当惑しております。
当社公式ウェブサイトへのアクセス遮断の理由を手短に申し上げますと、日本のエロゲメーカー全社が”言論の危機”に直面しているからなのです。

現在、あらゆるエロゲの表現内容を規制する法案が国会で審議されております。知識人や政治家たちは「日本製エロゲが国外で問題を引き起こしている。したがってエロゲを外国の目から隠すか、あるいは表現内容に制限を加えて検閲する必要がある」と主張しているのです。

当社としてはこの言葉を信用するしかありません。トラブルを避けるために国外からのアクセス遮断という措置を取ったわけです。

．．．ご了解していただけたでしょうか？
もし了解していただけない場合には、ぜひあなたの意見を日本政府と政治家に直接ぶつけてほしいのです。

たとえば、あなたは日本政府の高官に手紙を送ることができます。あるいは問題の存在を世間に知らしめるためにブログや他のメディアで意見を表明することもできるでしょう。これらの活動は我々にとって大きな助けになるでしょう。

もし賛同して行動していただけるならば、言論の自由は回復され我々の間を隔てている障害を取り払らうことができるかも知れません。
どうか我々を助けてください。
当社は今回の障害がほんの一時的なものであることを願っております。
よろしくお願い致します。

[4] Dannychoo.comによる転載記事

有名大手サイトDannychoo.comでDe JaY氏のOtaku Daysの記事が紹介される。No Name Losersの記事への言及やリンクはない。

2009/06/24 09:59 Dannychoo.com "Eroge Websites Blocked"

ともあれDannychoo.comの記事は日本の掲示板やブログに転載されることになった。

[5] Sankaku Complexの記事

6月24日付けの記事でSankaku Complexでも本件が報じられる。ソースは明示されていないが、minoriの告知文のスクリーンショットが引用されている。

Sankaku Complex Eroge Maker minori: "Dirty Foreigners Get Off Our Site!"

以下は記事本文の翻訳。

エロゲメーカーminori："汚い外国人、俺たちのサイトから失せろ！"

日本の政治家や団体によるメチャクチャで不合理な理由付けによるエロゲ禁止の決定に対して、efやWindやEden*で有名なビジュアルノベルメーカー・minoriはある回答を出した。非日本のIPから自社サイトへのアクセスを遮断したのである。

GeoIP関数modの深遠な奥義の達人・minoriは外国の反エロゲ首狩り族を自社サイトから一人残らず追放した。「日本人が外圧に対してこれほど弱腰でなかったら世界はもっとマシだったはず」といった内容の簡潔な日本式英語で書かれた告知文のオマケ付だ。

（[3]のminoriの最初の告知文の引用）

（[2]のOtaku Daysのスクリーンショットの引用）

（minori公式サイトの通常ページのスクリーンショットの引用）

今回の措置に何か意味があるのか、あるいは実際的な効果があるのかは疑問である。無料のプロキシー・サービスを利用すれば日本語のminoriサイトに簡単にアクセスできるのだから。今回の措置に失望した野蛮なファンであれ日本叩きフェミニスト団体（いつも付け込みやすい攻撃対象を探している）であれ依然として簡単にアクセス可能なのだ。

より重要な点は、minoriの告知文を読むと次の事実を忘れているように思えることだ。規制賛成を扇動していた日本のマスコミや禁止圧力をかけていた政治家、そしてそれに意気地無く従った業界の審議団体などの行動のことである…

米国の小人数のお節介な人権団体のせいで世界中の非日本人が責めを負ってしまうのでは、論理的で納得のいく措置とは言えない。外国人嫌悪に基づいた措置のように見えてしまうのだ。

世界と自国のお粗末な政治家と臆病な企業家に対して、日本人は明確に”ノー”と言うことを学ぶ必要があるように思える。

[6] 各サイトやブログへの転載

Dannychoo.comとSankaku Complexの記事はあちこちの海外サイトやブログに次々と転載される。参考までに一部のみ記しておく。

AnimeBlogger.net Antenna
Kotaku "Erotic Game Developer Explains Foreign Access Web Blocking"
Collateral Damage Studios "So it has come to this…"
cartoonleap "How to ban Ero Gaijins in a bad way!"

…以上で事実関係は明らかになったはず。はっきり言って事件そのものは些細な出来事であり表現規制の行方に大きな影響を与えるような問題ではない。

ただ、日本と海外の各サイトのコメント欄を比較対照しながら読んでみると日本人と非日本人のお互いの認識ギャップや思い込みが露呈していて興味深い点はある。日本・海外ともに様々な意見が混在している点は共通だが。

次回は実際に海外の一部サイトのコメントを取り上げて紹介する。

参考：
No Name Losers
minori公式ウェブサイト
Otaku Days －De JaY氏のドイツ語ブログ
Dannychoo.com "Eroge Websites Blocked"
Sankaku Complex - Eroge Maker minori: "Dirty Foreigners Get Off Our Site!"