Hしたいアニメキャラ・アンケートが示すインターネットの真実
- Tue
- 18:03
- 日本と海外
最近「伝言ゲーム」の打ってつけの実例を見つけたので紹介したい。あまり目立たなかったアンケート結果がインターネット上をぐるぐると巡りめぐっているうちに内容が歪曲され、ついには国際的な話題になったケースである。いつ・誰が・何を・どのように間違えたのか(あるいは故意に改変したのか)、意地悪な気持ちで楽しんでね。
インターネット・アンケートサイトVSinstで『エッチしたいアニメキャラは?』の投票結果が発表される。投票期間は2007年9月7日から10月7日、投票総数は7779票だった。
エッチしたいアニメキャラは? VS結果
VSinstは独特のアンケート方式を採用している。
a)1対1の勝ち抜き方式
b)画像を用いて直感的に選択させる
c)選択に時間制限あり(5~15秒)
つまりアンケート作成者はあらかじめ選択させる項目と同じ数の画像を必ず用意しなければならない。このアンケートでも開始時点で選択可能だったのは20キャラクター程度である。アンケート開始後、他のユーザーにより十数枚の画像が追加された。結局、選択可能なキャラクターの数は32にすぎなかった。
要するにこのアンケートは極めて限られた数のキャラを1対1で対決させて楽しむためのもので、一種のエンターテイメントである。客観的なデータの収集を狙ったものではない。
ちなみにVSistアンケートで投票総数7779票というのはそれほど多い方ではない。年間アニメNo.1アンケートなどの投票総数は200万票を越えている。
[2] 2008-01-30 2ch・ニュー速VIP板
VSistの結果発表から四ヶ月近く経ってから、2chのニュー速VIP板にアンケート結果のスレが立てられる。
[3] 2008-01-31 VIPPERな俺
翌日、人気サイト”VIPPERな俺”に「Hしたいアニメキャラランキングらしいけど、これどうなの?」というタイトルでニュー速VIP板の該当スレが転載される。
VIPPERな俺の記事
この記事では「VSist調べ」との表記はあるがVSistのアンケート結果へのリンクが失われている。そのためユーザーのコメントの内容がだんだん的外れになってきている(2009年5月5日現在でコメント数195)。
[4] 2009-03-09 newsing
一年以上経過後、ニュースサイトnewsingに"VIPPERな俺"の記事が転載される。ただし情報は大幅に削られ、その代わりに転載者の感想が付け加えられている。「VSist調べ」の表記はない。
newsingの記事
[5] 2009-05-03 アメーバニュース
その約2ヶ月後(VSist結果発表からは約1年7ヶ月後)にアメーバニュースで「Hしたいアニメキャラランキング 1位は峰不二子」というタイトルでアンケート結果が記事にされる。関連リンクはnewsingの記事のみ。アメーバニュースの記事は転載ではなく、内容の紹介に踏み込んでいる。
アメーバニュースの記事
最初の一文に注目してほしい。
”2ちゃんねるで「Hしたいアニメキャラランキング」が発表され、様々なコメントが寄せられている”
これはかなりズルい表現である。2chでランキングが「実施された」とは決して言わず、「発表され」たとだけ書いている。確かにこれはウソではない。しかし斜め読みをしている大半の読者は「ああ、2chで行われたランキングの記事なんだな」という印象を持つだろう。
もはやアンケートがVSistで実施されたことなど記事のどこにも出てこない。仮に関連リンクをたどって"VIPPERな俺"サイトに行き着いたとしてもVSistのアンケート結果へのリンクは失われているのである。
問題はそれだけではない。少なくともnewsingの記事の段階ではこのアンケートが実施されたのが1年以上前であることは読者も容易に知ることができた。ところがアメーバニュースの記事をいくら精読してもこのアンケートがいつ行われたのかサッパリ分からない。書いてないのだから。そのためあたかもこのランキングが最近実施されたかのような印象を受けてしまう。実際には1年7ヶ月も前の話なのだが。
結果としてアメーバニュースの記事は読者にかなりの誤解を与える可能性を持つこととなった。そして誤解は現実に発生したのである。
[6] 2009-05-03(合衆国現地時間、日本時間5月4日) SankakuComplex
アメーバニュースの記事はただちに海外ネタ系サイトSankakuComplexの目にとまり、ネタ記事の元となる。
SankakuComplex - "Characters You'd like to Have Sex With" Ranking
記事の最初の部分の翻訳:
”「どのキャラクターと一番セックスしたい?」という質問に対するアンケート結果が2chで発表され、結果の一部は驚くべきものだった。大方の予想通りのキャラがランクインしている一方で、幾人かのキャラは予想外のものだった”
この記事ではソースとしてアメーバニュースのみがリンクされている。皮肉なことに"The good source"と記されている。
記事本文では慎重に”2chで発表(emerging on 2ch)”と書かれている。だが、200を越えるコメントを読んでみるとユーザーの方はアンケートが「最近」「2chで」「実施」されたのだと完全に誤解している。しかもかなり大規模なアンケートで数百のキャラクターがリストアップされていたに違いないと思い込んでいる。
そのためコメントの内容は見当ハズれのものや誤解に誤解を重ねたトンチンカンなもの、不条理なランキングを珍解釈したり迷解釈したりするもの、などなかなか笑える。そういった迷解釈を翻訳しようかとも思ったけど、さすがに意地悪すぎるのでやめておこう…。
[7] 2009-05-03 (合衆国現地時間) AnimeBlogger.net Antenna
SankakuComplexの記事はすぐさま英語圏のオタク系アンテナサイトAnimeBlogger.net Antennaに転載された。
……まだまだ続きがあるのだけど、もうここらへんで充分だろう。今現在もいくつかの海外サイトでこのアンケート結果の(歪んだ)情報が次々と新しい誤解や誤った印象を生み出している。これぞまさしくインターネットだね!
参考:
VSist
AnimeBlogger.net Antenna
Comment
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2009.05.28 Thu 10:41 |
すごく興味深い記事だ。
やはりネットをやる最低限のリテラシーとしてネタ元をある程度確認するという習慣をつけないとな。
特に俺みたいな若いネット暦の浅いユーザーは疑ってかかるという概念がもともとないからな(政治関係なら誰かが入念にチェックしただろうけど)。
多分、この記事のは大多数の人が意図せずこの様な結果になったけど、この「噂の噂」問題が将来、ネットと一般社会を大きくわける溝に繋がる可能性も存分にあると思う。- #yjwl.vYI
- 名無しさん
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-
2009.05.29 Fri 06:39 |
> すごく興味深い記事だ。
> やはりネットをやる最低限のリテラシーとしてネタ元をある程度確認するという習慣をつけないとな。
ネットランキング程度の問題ならどれほど情報が歪がもうが笑い話ですむんですがね。
シリアスな問題で同じ現象が起こるとロクな事にならない。
危険なのは「ウソ」よりもむしろ「編集」です。
編集技法(特定の部分を強調・都合の悪い部分はカット・順番の入替え等)を駆使すれば何一つウソをつくことなく簡単に印象操作ができる。今回のケースで言えばアメーバニュースが実際にやっていますね
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